幸、灯る。

41回目の11月15日を無事迎えた。全世界の41回目の誕生日を迎えたミュージシャンの8人に1人は思うであろう「ジョン・レノンより長生きすることになったんだなあ」をやはり感慨深くしみじみと独り言の如く呟きながら高崎線最終電車で家路に着いた。

家に帰るとヨメ・トキーが僕がジョン・レノンより長生きしたこととヨメ・トキー自身に訪れた2つの喜ばしい出来事を祝する為の深夜の小晩餐を用意してくれた。

アクアパッツァという響きだけで地中海に浮かべた船の上にいるような気分になった。それは空腹に流し込んだ白ワインの功績でもあった。


16日午前7時。小鳥のさえずりのアラームで目を覚ます。風呂に入り月一のハートクリニックへ行く。再発した心房細動がなかなか治らず、先月から薬を増やしてのこの日、心電図の結果は変わらず。カテーテルアブレーション手術を以前より強めに薦められて少し凹む。


この日はヨメ・トキーが僕の誕生日を祝して1日フルコースツアーを企ててくれた。

行き先知れず、車でまず向かった先は前橋のmom's cakeというところであった。厳選された穀物と野菜果実とマクロビオティックという概念を味わった(気になった)。僕が最も惹かれたのは店主の方の言葉遣いと声のトーンであった。穏やかかつ丁寧でありそれでいてフランクな口調になんとも言えない好意を抱いた。また髪に白く小さな埃のようなものが付いていたのだけど、付いている方がこの方にとっては自然な気がしたし、ずっと付いていて欲しかった。


「穀物(白米は穀物じゃない)をしっかり食べること(自分の体にあった調理法で)、ちゃんとした塩を上手に使うことが大事。」と仰られていた眼差しには穏やかな佇まいの奥底にある強い信念のようなものを感じた。


車は山に向かって走っていた。ばっちりキマった紅葉樹林と枯れ散った樹林の合間をくねくねと登り7降り3くらいの割合で駆け抜け着いた先は榛名神社であった。

初めて訪れた榛名神社に僕は自分でもびっくりするくらいグッと来てしまった。本殿までの道中の自然の産物が悉く素晴らしく、空気の澄み具合は季節によるものなのか年中そうなのかは榛名神社ヴァージンなのでわからないが、視界が圧倒的にクリアで景色を眺めてもよし、吸ってもよし、温度もよしの三拍子揃いであった。そして登る事15分辿り着いた本殿周りは本社が補修の真っ最中でまさかの原寸大の写真の防音シートで包まれており、二人で「最後、写真!!?」となったが、拝殿の方は立体的な建造物のままであったので事なきを得た。

先日、ヨメ・トキーは一人で思い立ち秩父の三峰神社の奥の院に行った時になんらかの凄まじいパワーに手がビリビリしたらしいが、ここでも三峰ほどではなかったがビリビリ来ており、彼女の手を触るととても温かくそういうパワーを感じる兆しのない自分はとても羨ましかった。


次に向かった先は榛名富士であった。当初、登りは歩いて帰りロープウエイ降りてくるというプランだったようだが、榛名神社に時間を取られ、いや時間を預けさしてもらったので、巻きが入り登りもロープウエイで。

山頂の榛名富士神社でもお参りを。先程はとはうって変わり寒く、関東平野を一望出来ることもあるらしいが、視界もほど悪く、近しい山々の形が日本昔話の山のようだなと思ったぐらいしか特筆することはなかった。


山を降ると急に道が混み始め、程なくして伊香保温泉郷に。今朝風呂に入ったので温泉はスルーかと思っていたのであるが、榛名富士登山でかく予定だった汗を温泉で流すプランであったようだ。

がしかし伊香保は予想以上に混雑しており、お目当の温泉に行く為に停める予定の駐車場が待ちの長蛇の列。このままではディナーの予約に間に合わないというヨメ・トキーの判断で諦め、山から街へ向けて車を走らせる。にしたら時間が余る、せめて何処かで足湯でもと検索すること2分。都合良き足湯スポットが道の駅 よしおか温泉という所にあり。程なくして到着してさあ入ろうかと行ってみると8脚ほどしか浸けれない程のスペースに大学生くらいのカップルがL字に仲睦まじく2脚づつ浸け合っており、そこに変な夫婦の4脚を追加するのは愚行極まりないことであると阿吽の目配せで直ぐさまよしおか温泉の本風呂に入ることに切り替えた。この英断により、浸かった温泉の気持ち良さは格別であった。


そして温泉から走ること10分。この日のラストプランとして訪れたのはVegan Restaurant あわたまというところであった。Tannoyの古く馬鹿でかいスピーカーが2台隙間なく並べてありそこから古いジャズ音楽が流れていた隣の棚には沢山のレコードが並んでいた。もちろんレコードプレーヤーもあったがそのプレーヤーの上に置かれたiPhoneのイヤホンジャックからアンプに繋がれていた。

お料理は総じて美味いといういうよりも不自由で楽しい味であった。これはこのWEBのトップページに書いてある、"Get unfree oneday - 不自由が心地良く不自由を自由に楽しめる人に幸が灯り、そしてその灯は誰も消すことができない。"という僕の最近の考えにも通づるところがこのお店には詰まっているように勝手に感じて嬉しく楽しくなっていた。

これらの料理はまずヴィーガンという縛りがあり、更にオーガニック食材という縛りがあり、季節という縛りがあり、時間という縛りがあることを心地良いと感じている店主が自由に楽しみながら作っている料理群であったように感じた。砂糖なんか当然全く使ってないのに前菜からデザートまで(スープ料理の写真撮り忘れた)後味が全てほんのり甘いのは店主の幸の味ではないだろうか。不思議なくらい酸味や辛味のない料理ばかりだったので正直こんなに全部甘くなくてもとは流石に舌目線では思ったが、、、。

帰り際にスピーカーに耳を傾けるとレコードノイズがしていて、iPhoneで流してるのにプチプチ鳴ってるのはスピーカーが古いからかなと思ったら、レコードの音を録音したのを流しているとのことであった。店主さんはジャマイカの音楽(特にレゲエ以前の古いレコード)しか聴かないしヴィーガンになったきっかけもジャマイカという意外な経緯にしばらく話込んでしまったくらい面白い方であった。

そんなこんなで楽しいヨメ・トキーツアーは甘味に包まれながら幕を閉じた。


トキロックが本当に元気になってきて一年前じゃ考えられなかった一年後を過ごせたことが嬉しくてつらつらだらだらと長くなってしまったが、その喜びを書き留めて置きたくなったのでそこは抗うことなく、今は。


gigadylan


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