そうなれないから磨かれたステンレス。

唐突にキッチンのステンレス台をオービタルサンダーで研磨し始めていた。
錆びついてるのはステンレス台ではなく自分の方ではないかと思いながら。


朝(昼過ぎのこともあるが) 起きると大体、まず珈琲を淹れる。
それはいつしか自分の調子を測るバロメーターのような役割に。

豆を挽いてドリップポットで淹れる時、豆を挽いてエアロプレスで淹れる時、
挽いてある粉でエアロプレスで淹れる時、
白湯で済ます時、お湯を沸かすことすら面倒な時。
細かく言えばお湯の温度を計ったり、カップやカラフェを温めたりしたり等
細分化され絶好調から絶不調まで測れる所作なのだが
ここのところ、電子ケトルに水を入れることすら面倒と感じる朝多めの日々である。

そんな日常にほのかに動揺し混乱した挙句、オービタルサンダーに手を伸ばすこととなる。

打開策はわからないが、とにかく磨ける何かを磨かずにはおれなかった。
生きているとそういう思いに駆られることは一度くらいはあるものだ。
何も考えず80番から始め、これはやり過ぎだと120番にすかさず変え、
240番で整え、フェルトバフに青棒を着けて仕上げる。
思ってたよりもマットな仕上がりになる。

高揚感もなければ満足感もない、ただステンレスの手触りが以前と比べさらっとしたことに

”おっ”となりほっとしただけであった。




今一度、ステンレステーブルの上で向島のヤスさんが送ってくれた豆を挽き
久しぶりにハンドドリップで珈琲を淹れる。

新鮮な珈琲豆の膨らみと香りを楽しむ。

毎日こうあれればとも思うがそうなれないから磨かれるステンレスもある。
そうなれないから磨かれた何かに囲まれ生きている。

まだ磨ける何かさえあればこれからもきっと。


GIGADYLAN




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